それぞれの春

 春の夜空は、明るい。と気づいたのは ここ数年。
先日、バスをひとつ逃してしまい寒空のなか30分ぼんやり待つのもなにかと・・・バス停を3つほど歩きました。
15分間歩いても、待つ15分間の長さのつらかったこと。
タクシーをつかまえようかと挫けそうになっても、タクシーの影すらも、私以外の人影すらも見当たらないようなバス停の前で
ひたすら夜空を見上げながら 温かいこと、暖かいものを思い浮かべようと必死でした。

 春分近くの夜空は、少し白みがかった群青色なんだなぁ・・・ずっと目を凝らしてみていると 昼にもみえるなぁと見上げながら
午後に大学に合格しました!と お菓子をもってやってきてくれたHちゃんとそのお母さんのことを思い浮かべてみたり。
10年以上前に子供クラスを始めた頃にやってきてくれて なぜか高校2年生ころまで もちろん お休みする期間はあっても
うちのことを うまくご利用いただき、晴れてこの春 一橋大学政治経済学部現役合格。 いや・・・すごいね・・・すごいっすね そんなお嬢さんを持った母親の気持ちっていうのは いったいどんなものなんですか! Miwaさん! と私のひやかしに。 母上Miwaさんは、「あの子、こうやっていま 笑顔でいれるけれど。 これまで たくさん泣いたから・・ いま笑っていてくれて。いえ いま 合格できなかったとしても こうやってあの子が笑う姿をみていると、ああ たくさん泣いて よかったのかもなぁ・・・って思うんです」

 たくさん泣いて 涙を何かに変えながら 笑う力になって、その姿をみて 嬉しい。 母親の思いがはいってますねぇ 
泣けるじゃないですか。 と 夜空を見上げながら 涙ぐむ私。

 涙ぐんだついでに
 去年の夏に亡くなった 自分の父に バス停で一人夜空に問いかけ始める。

 お父さん、お父さんはさ。お母さんのこと 子育てが下手だった・・・って 晩年、私に呟いたね。
でもさ お父さん お父さんが いちばん 子育って下手だったのかもよ・・・ 優しい人だったよね。自分にきびしくて人にやさしくて。
そんなお父さんの優しさに、大体の人はスポイルされちゃうんだよ。 凡人はね優しい人には つけあがってしまうんだよ。この私みたいにさ。

 お父さん・・・お父さんが亡くなってからさ・・・ お父さんがお金を貸した人の 借用書が出てきたよ。お父さん 期日ももうけなくて人にお金を貸すような人だったね。そして 返してこなくても 放っておく・・・そんな人だったね。そのやさしさって もしかすると 人をダメにしてしまうのかもしれないよ。 自分の娘にも その調子で甘かったから・・・。まぁそのぶん お母さんがヤクザのように怖かったけどね。
でもさ お父さんのやさしさは あれは罪つくりだよ。 おかげでお父さん、わたしは自分立て直すのに 残りの人生 けっこう必死だよ。

 Hちゃんが、一橋大学合格したって・・・女の子ですごいねぇ。そんな子もいるんだねぇ。
いっぱい 泣いたってお母さん言っていた。きっと そうなんだろうね。 
 わたしはさ 大した泣きもしなかった青春送っていたから こうやって 街のはずれにあるようなバス停で凍えながら いまごろになって涙してんのかねお父さん。 そうはいっても、これ、ここ最近だけどさお父さん・・・ 甘えていいようなお父さんが 病気になってから 色々なことあったけどさ、お父さんがもういない(ってまだ闘病してただけで生きていたんだけど)そう思ってからのほうが なんだか しゃっきりしたよ。けっこう泣いたけどさ。まぁ こうやって なんとかやっているよ お父さん。