お寿司屋さんのカウンター。というのがこれ、身内で貸し切りとか気が楽だよなぁ・・・って思っている人結構、多いのではないかと。いかがでしょうか、皆さま。
先日、母の82歳の誕生日を祝いに、トンプソンの少ないおこづかいでごちそうしてくれる。というのであるお寿司屋さんにうかがいました。
カウンターだけの店内の端に若い娘さんをつれたご両親の3名が先客で静かに食事をされていました。そこに私たち家族が端に、真ん中数席が空いた状態でした。
で、これまでの経験からいくと、そこには2名のお客さんが座るのだろーなーと。
乾杯して宴が進み、向こう端の3名様がお会計と立ち上がると同時に2名の男女が入店。
男の人は60代、女性は おそらく50代あたり。
入ってきた瞬間に、夫婦ではない浮足立った空気が・・・。
エル字型のカウンターの私の目の前に二人座る。・・・ まいったなぁ・・・と 内心 私 思う。
そうやって 思っていると お会計を済ませたご家族の娘さんが私に声をかけてくれる。
なんと! 同じ店内にいながらも全く察知できなかったほど、静かな佇まいのご家族のそのお嬢さんは大学生からインターン時代までずっとスクールを利用してくれて、小樽の病院にお勤めのMさんでした。 久しぶりの再会と、ご両親への挨拶と嬉しい瞬間でした。
・・・で、座って落ち着いて握られたお寿司を食しながら・・・
いつもの私の悪い癖が出てきてしまうなぁ・・・と 思うほど、視界に入ってきてしまうその初老・・・いや中年というべきか そのカップルはお二人ともとてもとても甘ったるい声を出して語り合う。
お互い、好かれ合うことに必死になっているその声音が・・・ こう 申しては失礼だけれど、見た目とマッチしないのだ。
もうちょっといい年をした大人なら、自分の声で話してはどうなのだろうか。 恋をすると 人はみな、こんな声を出してしまうのだろうか。・・・ となると、恋というのは恥ずかしいことなのかもしれない・・・と下をむきながらワインをすする私。
女性のほうは可愛らしい自分をアピールすることとスマホで写真を撮ることにとにかく忙しい。男性は甘い声を出しながら、女性のちょっぴり幼稚な会話に付き合いつつも、ときおり博識であることを周囲に認めさせるそんな言葉も、会話にいれる。
・・・とにかく 二人はお互いのアピールに忙しい。その傍らで 私たちの存在も視線も感じながら。
おそらく このカウンターが全て自分の貸し切りだったらと 私たちと同様に 思っていると思った。
そのうち、女性がちょっと その男性の素養レベルに達しない発言をしたのだろうか。頬を赤く染めながら「わたしはもの知らずだし・・・」と 両手で頬を挟む仕草をした時に・・・
なんと・・・あろうことか 「かわいらしい方・・・ですね」と ただ単にカウンター席の横にいる客の一人である 私が そんな言葉を発してしまっていた。
高いところから物を言うつもりなど 全くなく・・・ あまりにも 媚態を駆使しようとするその女性が
ふと・・・えらく可愛らしい人なんだろうなぁ と思えたのだ。 わたしなら、自分がトンチンカンなことを言って笑われても、あ そーですか 存じ上げなくて。 の一言で ボソリ。で終わるだろーなー。とついつい 口から出てしまった。
私のそんな戯言を拾ったそのお二人は それはそれは嬉しそうな笑顔を私に向けた。
それから 堰を切ったように、私たち家族と そのお二人は 暫く 会話を楽しみ 和気あいあいとした空気の中、お別れしてその店を後にした。
若いころ、カウンターの席などで声をかけてくる男の人は、若い自分たちに声をかけたいんだな などと 私は、愚かしくも 信じていた若き日の傲慢な自分に、思わず声をかけてみたくなった。
あんた それは違うよ。カウンターで声をかけてきてたオジサンたちは、大した器量もよくないあんたと知り合いたいとかよりも、なによりも自分の居場所を楽しいものにしようとしただけなんだよ。と。
カウンターの席ほど、お互いを意識しながらツンケンそ知らぬふりをする場所として、居たたまれない席はないのだ。
その居たたまれなさが辛いから、そのうち相手のいいところを見出そうと声をかけ、自分の居るところを楽しくしようという。そんな気持ちがオジサンたちにはあったのではないか?
と、いまの私なら そんな気持ちの相手に 気持ちよく話し相手をするだろうなぁ・・・と 昔を偲ぶ。