ロマンティックなタッチのものが 義母の好みだったのだな。・・・と、カナダの実家からやってきた ティーカップやリネンのものなどを眺めて溜息をついていたことがある。
究極のマザコン男、トンプソンはカナダの実家が売りに出て、たたむというときに
日本に船便でコンテナ一個分にものを詰め込み それはそれは飽きれるようなものも 運んできた。
絵画は まぁ 許そう。しかし・・・ リネンや トンプソンの母が若かりし頃に使っていたハンカチやら・・・ はっきり申すと 私にとっては ただの布切れ。・・・こーゆーものに高い船賃かけて・・・勘弁してくれ。と正直思っていた。
…が、時刻の中で リネンを使う姿勢で挑んでみよう。・・・と、試みていたら
自分の知らない世界が 浮き上がってきた。
私の狭い世界では 作ることの出来なかった世界。 リネン・・・って ロマンチックなものなんだなぁ。・・・と。 昔というか 義理の母の生きた時代は ロマンチックな 1800年代後半の人たちが作り出す世界がまだ 普段の生活の中に残っていたのだろう。現代のような無機質、つるりとした空間ではない。
現代でも そういう生活空間を好む人はいると思うけれど、そういった品物は アンティーク、骨董と呼ばれるようなお店にしかみあたらなくなった。
・・・で ハンカチの類。
こればかりは あんた いったいどーすんの? と 昔のサイズって あの女の人が小指をたててくしゃみをするときなど くしゅんっ と鼻先に当てるという意図だけに作られたようなサイズ。 現代の日本サイズの手を拭くための大判サイズではない。
これは ハッキリ言って ゴミ。・・・と私の目にはずっと・・・映っていた。
が、トンプソンの手前、捨てるわけにはいかない。
・・・が、今年の夏。ある 変化が起こった。
これを ファッションの一部にしよう。と、夏の間は特に ちょっと額の汗を拭いたり。手先を拭いたり
ジーンズのポケットからギンガムチェックの柄を出してみせたり。白い服には少しロマンチックな刺繍のハンカチを合わせる。など し始めた。
ハンカチは 夏服と合う。 と 思った。
トンプソンの母親は、女らしい女性だった。本当に亡くなるまで。
こんな ロマンティックなものを若い時代から 愛し続けた人は 90を超えても そういう人だった。