味わいを差し出す人

余市を通り、長い長いトンネルをくぐり 積丹へと向かう。

美国という小さな町がある。

そこの美国観光ハウスという宿は、私たち家族のお気に入りであり。

夏が来ると そわそわとそちらに足を向けたくなる。

この夏は奈良からの叔父夫婦を招待して、そこで出される海の幸を堪能してまいりました。

 

そこで出される 味は、いつも行くたびに変わらず、安定していて、そして優しい。

この優しさはどこから来るのだろうか・・・ よほどお宿に泊まる人の気持ちに沿った優しい心の料理人さんが作っているのだろう。と、ずっと思っていたら、なんと なんと この度やっとわかったことが、70歳にはなっているであろうそのお宿の女将さんが腕をふるっているというのだ。

私は、驚きのあまり少しの間、言葉が出なかった。

ずっと これまで お会計のときだけ挨拶にくるのがその女将さんかと信じていたのだから。

・・・ だから あそこまで優しい 人の心に浸透してゆくような味を出せるのか。と。

こう言っては 失礼かもしれないが 期限付きの味である。 味はその人にしか出せないもの。

だから尊い。

私は 食い意地がはりすぎているのだろうか。 外で頂く食事は その人の味を味わいに行くもの。と信じている。それ以外のものだったら 欲しくない。

女将さんは 心を込めて 味を私たちに提供してくれているから ここまで 心をうつ時間を私たちにくれたのだ。と。

味を紡ぐ人というのは 大変だろうけれど 素晴らしい仕事だな。と 尊敬する。

夏は うに アワビ 秋はカニ。そして 長い冬は 冬ごもり。 あの 海風の厳しい海岸道を 車を飛ばして訪れる客は皆無になる。一切 封鎖し、そして3月春から営業を始められる。

おそらく 春の山菜なども 美味しいお皿があるのだろうな。と 想像するが さすがに 天候の落ち着かない3月4月は 行く勇気にかける。そうこうしているうちに 夏がやってきて それなら うに アワビの季節に となる。

女将さんが作っていると聞いて 秋のカニ料理も 女将さんならどんな風に仕上げてくるのか それを知りに行ってみたいと思った。